前回までに、アーチが整った足と崩れた足のフットプリントについて比較しました。
直立したときの足裏の比較です。
今回は、足を立体的に見て、歩行時の動きを考えてみます。 歩行運動は、左右の足それぞれに交互に体重を乗せながら身体を推進する運動なので、まず、片足立ちについて考えます。
アーチが崩れた足は自立できないので安定的に片足立ちできない
アーチが整った足は、自立できる構造になっています。こんなに複数のパーツから構成されているのに、自立できる構造になっているとは驚きます。 そのため、アーチが整っている足なら、片足で普通に立っていられます。実際に模型を上から押してもビクともしません。つまり、片足に体重を乗せても安定して立っていられるということです。
一方、アーチが崩れた足は、構造的に自立することができません。模型でアーチをつぶしていくと自立できなくなります。 そのため、片足立ちができない足はアーチが崩れているということです。
重要なのは母趾の位置
足のアーチは、踵、小趾球、母趾球の3点から構成されています。
この構造体が自立できるのは、3点が適切な位置関係にあるときです。
足の骨格構造上、踵と小趾球の位置は変化しにくいのに対して、母趾球の位置は簡単に変化しやすいため、母趾を適切な位置に保持できる筋力バランスがあるかどうかが重要です。 骨の模型でみてみると、母趾が少しでも前方内側へ移動する(=アーチが崩れる)と、簡単に足は倒れます。
アーチが崩れた足では、安定的に歩けない
安定して歩くには、まずは、着地時にぐらつくことなく着地して片足に体重を乗せることが大切です。これは、片足に体重を乗せるときに、アーチが整った足になっているということです。この、踵-小趾球-母趾球の3点が接地した状態から、小趾球と母趾球が接地した状態のまま踵を上に上げることができるとき、5本の趾をバランスよく使って地面を蹴ることができます。
ところが、アーチが崩れた足の場合、片足に体重を乗せたときには、既に踵-小趾球-母趾球の3点への負荷バランスが崩れていて、小趾球への負荷が減り、主に踵と母趾球に偏った状態になっています。この状態のまま踵を上げていくと、5本の趾をバランス良く使えず、母趾球への負担が増えながら、最終的に母趾球だけで地面を蹴る状態になってしまいます。
骨の模型で見てみると、アーチが整っていれば、5本の指は真っ直ぐ前を向いて指の付け根で折れ曲がるだけなので、動きは極めてシンプルです。
人間の趾の付け根の配置が小趾から第二趾(人差し指)にかけて順番に前方になっているのは、地面を蹴るときに自然と小趾から第二趾へ順番に移動できるようになっているからです。
一方、アーチが崩れていると、5本の指は外側を向き、この状態で踵を上げると、母趾球への負担を増やしながら地面を蹴る動きになることが分かります。 そして、地面を蹴り上げていく間に、母趾の位置が前方へ押し出されてアーチをつぶしながら地面を蹴ることになるので、母趾につながる短母趾屈筋、長母趾屈筋(腱)や足底腱膜などが酷使される状態になります。
横からみると母趾以外の趾が使いにくいことが更に分かりやすいです。
こうした動きは外反母趾の原因にもなりますし、薬指や中指の上部が靴に当たって痛くなる原因にもなります。靴を履いていると発生する痛みのほとんどは、このような動きで説明できるといっても過言ではないでしょう。
歩行は、左右の足を交互に使って推進するので、アーチが崩れた足でも、直ぐに反対側の足で着地して問題なく歩くことができます。
しかし、足の特定の場所に負荷をかけたり、靴を履いて痛みを発生させたりすることなく安定して歩くには、小趾と母趾の両方がきちんとアーチ形成に寄与して、バランスよく使える状態になっていることがとても大切なのです。
それでは、また。
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