私は前職で、一般企業や官公庁向けに環境の価値などについての調査・分析やコンサルティング業務に従事していました。数えきれないほどの顧客に対してプレゼンテーションをしたり、社内外の会議で説明や発言をしたりしてきましたが、今振り返ると、経験を積むほど思ったとおりの結果を得るなどの手ごたえを感じることができました。
しかし、経験を積むほどその腕前が上がるのは誰しもそうだと思いますが、プレゼンテーションや会議を終えた後の自身にとっての「上手くいった!」という満足感は、今思えば、「自身の心に宿る自信の有無」の影響が最も大きかったと思っています。経験を積むほど専門知識が増えて自信がつくことは事実ですが、どんなに経験を積んでも、例えば地位の高い方や見識の高い方を目の前にして自身とのレベルの差を意識した瞬間、とたんに上手に話せなくなってしまう経験も何度もあったからです。
この状態は、いわゆる「上がってしまう」状態で、要するに自信喪失の状態といえます。
例えば企画コンペでの大切なプレゼンテーションや、ここ一番の交渉の場面などで地位の高い方や見識の高い方が相手方にいらっしゃったら、折角の経験や準備の成果を十分に発揮することができなくなってしまいます。
こんな時、克服するためのテクニックの一つに「姿勢」というものがあると考えています。私は、自身のそうした弱い心を身体の「姿勢」で補強していました。
そのきっかけとなったのは、TED TalkのAmy Cuddy” Your body language may shape who you are” という動画です。この方が交通事故により心身共に自信を喪失した後に、どのように自信を取り戻し、そして復活を遂げたかという話です。”Fake it till you make it(上手くいくまで、上手くいっているふりをしなさい)”ということわざを使いながら、自信あるポーズや身振りを意識的にすることで、相手にも自信が伝わるだけでなく、自身の中にも自信が出てきて、実際に欲しい結果を手に入れる可能性が高まるという内容です(私はそのように理解しました)。2023年現在も依然としてTED Talkの視聴回数上位になっていて、世界中で感心が持たれたわけですが、その後に科学的根拠が不明ということが指摘されて物議を醸したと言われています。
私はこの話をMBAの学びを通じて偶然知り、その後も前職の女性管理職研修で伺って、何となく分かるなあと感じていました。地位の高い方の前で説明や交渉する際にも意識的に姿勢を保って取り組むと、不必要な焦りを感じることがなく、落ち着いて行動することができた経験が実際に何度もあります。要するに、物事をうまく進められるかどうかは、多分に自身の心の状態―自信が持てているかどうか―の影響が大きいということだろうと理解しています。そして、その自信が持てる状態を作り出す要素の一つに「姿勢」があるだろうということです。Amy Cuddy博士の論文に疑義が持たれるなど、科学的立証は大変難しいテーマだと思いますが、これまでの経験を踏まえると否定もできません。
このようなことから、弊社は前回で説明したCの姿勢を、身体が最も安定すると同時に心に自信を持つことを支援してくれる(だろう)姿勢として重視しています。そして、靴、特にヒールがある靴は、履いた時にDの姿勢がとれる設計になっていなければ、どんなに頑張ってもCの姿勢をとることはできません。したがって、弊社では、Cの姿勢を実現できる靴づくりを目指しているというわけです。
次回は、靴、特にヒールのある靴が姿勢にどのように影響するのか考えます。
それでは、また。
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