靴という観点から外反母趾を考えるとき、履いて痛くなければ大丈夫と思う方が多いかもしれません。
しかし、外反母趾の方は、足のアーチが崩れているため、必然的に前傾姿勢になってしまいます。そして、身体の筋力バランスも前傾姿勢をキープするためのバランス状態になっています。
この前傾姿勢を止めない限り、外反母趾は維持されてしまいますし、前傾姿勢の状態が酷くなれば外反母趾も酷くなるため、前傾姿勢を回避することがとても大切と言えます。 そのため、前傾姿勢にならない靴を選ぶことがとても大切です。

ここでは、ブラックのエナメル8cmヒールをお求めになられたE.W様の姿勢を分析していきます。左足の方が右足よりアーチの崩れ方が顕著です。
では、まずは真横から見た姿勢を比較していきます。

靴を履いていないときの姿を見ると、やはり前傾姿勢です。
そして、以前からお持ちの靴(ベージュ)を履いた時も前傾姿勢になっています。これは、アーチが崩れた足で選んだ靴を履いた時も、やはり足が崩れた状態のままなので、必然的に前傾姿勢になってしまうためです。
クァオリアでは、足のアーチが崩れた方でも、本来のアーチが整った状態をシミュレーションして靴を設計しますが、外反母趾の場合は特に慎重に設計します。
その甲斐もあって、今回製作したエナメル(ブラック)の靴を履いた時には足が本来のアーチが整った状態に近づき、理想の姿勢を取って頂くことができました。
耳、腰、膝、くるぶしが概ね一直線に並ぶ姿勢を理想の姿勢と考えているのですが、この姿勢が取れる場合は、今回のエナメルの靴のように8cmヒールであっても足の前方に自重が偏ることなく、踵も含めて足裏全体でバランスよく身体を支えることができるため、快適に履くことができます。
理想の姿勢がとれるかどうかは、長時間靴を履いていられるかどうかに大きく影響するので、靴選びの際にはとても大切です。
ベージュの靴の時の姿勢の場合は、靴の先端に足がどんどん押し付けられてしまうので、痛くて履いていられなくなります。
また、前傾姿勢で靴を履くと母趾球に負担をかけることになるため、外反母趾の方は靴の外からも母趾の屈曲が分かります(ベージュの靴)。しかし、指の配置を十分に考慮した上で理想の姿勢を取れる靴の設計にすることによって、母趾球への負担と母趾の屈曲が緩和して靴の変形も緩和します(エナメル、ブラックの靴)。

次は、正面から見た姿勢を比較していきます。

靴を履いていないときの状態を見ると、身体の中心軸に対して骨盤が右に押し出されています。ご自身で選ばれた靴(ベージュ)を履いた時も同様です。
これは、左足のアーチの崩れ方が右足より顕著であるため、左足で骨盤を右に押し出しやすい状態になり、身体全体のバランスをとるため頭が左側に寄ってしまうことが主な原因の一つです。 一方、エナメル(ブラック)の靴では、完全な左右対称には至っていませんが、本来の足のアーチに近づいたため歪みもかなり緩和しています。身体全体の筋力バランスは、直ぐには完璧な状態にはなりませんが、日頃から姿勢を意識することで徐々に変化していきます。
足のアーチも様々な筋力バランスで形成されます。
日頃から、本当に合った靴を履きつつ、足のアーチから頭に至るまでの姿勢を意識した生活を送ることによって、歪みのない筋力バランスに整っていきます。
腰に痛みを感じられているというE.W様ですが、筋力バランスが整っていくと、そうした不具合も緩和していくと思います。今後の変化が楽しみです。
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