ただ靴をつくるのではなく「快適に歩く」をつくる

自分の足の骨格が崩れているなんて考えたことはありますか? 実は、私自身はオーダーメイド靴の工房で先生に指摘されるまで、全く考えたことはありませんでした。確かに、右足の母趾が左足より大きかったので、当時はどんな靴を履いても右の母趾だけ痛くなり易い状態ではありました。しかし、それまで普通に仕事でパンプスを1日中履いていましたし、偏平足でもありませんし、どちらかといえば歩くのは速い方でしたので、足が崩れているなんて考えたこともありませんでした。

更に、一旦崩れた足は治らないとも言われ、とてもショックだったことを覚えています。だから、オーダーメイドでその時の足に合った靴を作った方が良いと。

当時、足や靴について何も知識がなかった私にとっては、先生がそう仰るなら仕方ないとあきらめて、その時の足に合った靴型を製作して頂きました。 ところが、完成した靴は母趾への当たりは緩和されましたが、期待に反して歩きにくい靴でした。今思えば、それもそのはず。外反母趾気味の右足は、母趾球に相当する部分の幅は広めに、いわゆる開帳足のまま履ける靴になったため、アーチが崩れた状態でしか履けない、本来の足から遠のいた靴だったためです。

数年にわたる様々な靴型製作と靴の長時間歩行テストによる研究開発を経て、ようやく辿り着いたのは、「その人の足に合う靴」とは「その人の本来の足に合う靴」ということでした。

つまり、外反母趾であるなら、その変形に合わせた靴にするのではなく、その人が外反母趾でなかった場合の足に合わせて設計するということです。このような設計思想で設計するなら、当時外反母趾気味だった私の靴の母趾球に相当する部分の幅は、実際の幅より随分細くするべきです。そして、実際にそのような設計思想に基づく靴はとても快適です。 これが、クァオリアはある意味真逆のアプローチ、と説明する理由です。

例えば外反母趾の方が、本来の足に合わせた幅の狭い靴をそのまま履いたら、、、母趾が押されて痛くて履けないだろうと想像できます。

どんな道具も、本来の使い方とは違う使い方をしたら上手く使えないことは明らかです。 靴も一種の道具ですから、適切な使い方をした時に最も上手く使えます。つまり、現在の崩れた足ではなく、本来の足に合った靴を手に入れたなら、本来の足で履いて、本来の立ち方&歩き方で使えたときに初めて快適に履けて歩けるのです。

崩れた足でも、本来の足に合わせた靴を快適に履けるようにしてくれるのは各種オリジナルパッド。もし、このパッドが何も入っていなかったら、長時間快適には歩けないでしょう。これがあるからこそ、崩れた足でも、ある意味真逆の発想で設計されたクァオリアの靴を長時間履けるわけです。 程よい弾力のゴム素材のオリジナルパッドが底面から程よく足を押し返してくれるため、長時間でも快適に歩行できます。一度体験すると、やみつきになります。

クァオリアが考える理想の姿勢とは下図のCです。

一般的に、多くの方はAの状態であることが多いです。いわゆる前傾姿勢です。しかし、この姿勢は、身体の重心がくるぶしより前に位置してしまうため、膝、腰、肩などの関節にじわじわと負担がかかってしまいます。何より、前足部に体重の多くがのしかかり、長時間歩いていると足指の付け根(MTP関節)周辺、特に母趾が痛くなってしまいます。姿勢Bはいわゆる「きをつけ」の姿勢で、反り腰のため腰が痛くなってしまいます。

一方、各関節が地面に対して垂直に直列した状態(姿勢C)のとき、それぞれの関節にかかる負担は最小限になり、外力を加えられても動じずにどっしり立っていられます。

しかし、今までAの姿勢だった方が突然Cの姿勢をとろうとすると後ろへ倒れそうに感じになり簡単ではありません。

実は、足の甲を立ち上げて本来の足のアーチを意識すると意外と簡単に姿勢Cをとることができます。つまり、足のアーチを意識して足の甲を立てて、母趾以外の4本の足の指先で前傾になりそうな身体を軽く押し返し、丹田に意識を集中して股関節と膝をつなぐ筋肉を使ってどっしりと立つのです。

この時、重心はくるぶし周辺を通るため、土踏まずから踵にかけて自重を最も感じ、さらに足の骨格も本来の足になれば、前足部も含めた足裏全体で自重を支えることができます。

逆に足が崩れていると、折角の足のアーチ構造を使いこなせず、姿勢が前傾となって自重が前足部、特に母趾に負担をかけることになり、外反母趾などの不具合を誘発する原因の一つとなります。

理想の姿勢をキープするためにも重要な足のアーチ。これらを総合してクァオリアでは本来の立ち方と考えて、本来の立ち方ができるように靴を設計しています。

クァオリアが考える本来の歩き方とは、母趾以外の4本の足の指(趾)を使う歩き方。

着地の際はなるべく足裏全体で着地できるように十分に後ろ足で上体を前へ押し出しながら歩きます。踵だけで着地すると踵を痛めてしまうため注意してください。このとき後ろ足の膝は曲げない方が下腿の様々な筋力を養えるためお勧めです。

着地後は、主に小指(小趾、第五趾)側を接地させながら足をまっすぐ前へ蹴り上げると、足の構造上、自然と前足部(MTP関節)で第五趾から第二趾(人差し指)へ接地面が移動し、第二趾の先端から離陸する歩き方になります。このとき、足の構造的には母趾球に大きな負担がかかることはありません。 ところが、本来のアーチが無い崩れた足で長年歩いていると、着地後に足を蹴るときの接地面が主として踵と母趾球をつなぐラインになってしまいます。このような歩き方をすると母趾球で離陸することになり、母趾球への負担が非常に大きくなって母趾球の痛みが発生しやすくなります。母趾球にタコができている方は傷めないように要注意です。

長年崩れた足で生活して身についてしまっている姿勢や歩き方は簡単にはやめられませんが、本来の立ち方と歩き方を知った上で意識的に日常生活を送るだけで、全く知らない場合とは大きく差が出ます。人間の意識というものは、身体に対して様々な影響があると実感します。

そのため、初回カウンセリングと納品時のフィッティングの際に、本来の立ち方と歩き方を丁寧にご説明した上で、実践して頂いて体感頂きます。初めは思うようにできませんし、足の状態によっては確かに限界もありますが、本来の足に合った靴を本来の立ち方と歩き方を意識しながら履いているうちに徐々に身について、変化していきます。 また、日常的にできる簡単なストレッチもご紹介しますので、できる範囲で取り組んで頂けると、より一層、快適に歩くことができます。

このように、一口にオーダーメイドシューズと言っても、設計する際の考え方、設計思想によって完成する靴は全く異なります。さらに、靴を道具とみなして適切な使い方をお伝えする靴というのも、全く新しいタイプの靴と感じて頂けると思います。過去のオーダーメイドで満足できなかった経験をお持ちの方も、足の骨格構造の理解にこだわり抜いたクァオリアの靴で違いをお試しください。

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